名前を呼ばれることも呼ぶこともない生活
この数年、私は夫の名前を呼んだことはありません。夫もしかり。
そもそも名前を呼び捨てにする関係は夫との間ではほんのわずかな間だけでした。結婚してからはあだ名だし、子供の前ではパパやママだし。
自分を自分でママと呼ぶことには抵抗があります。しかし子供が一番発音しやすいものが「お母さん」よりも「ママ」だったので仕方がなく定着してしまった感。
子供の前で自分で「ママはね」などと言うと全自分が「ないわーーー」となります。私にとっての「ママ」のイメージは、髪の毛はゆるふわの三つ編みをマリ―アントワネットみたいにまとめ髪にしていて、ひらひらのワンピース型エプロンを身に着けていて、買い物には藤のバッグを持っていく。得意なことは家事全般。決して声を荒げることなどしない。いつも裏声で話している。あ、これ小倉優子じゃない?ゆうこりんがママだったらよかった。
私はもう誰にも名前を呼ばれることはないのかもしれない。夫とは「あなた」と呼び合っているし。「あなた」つってもあれですよ。「あなた♡」などという甘い響きでは決してなく、半沢直樹が大和田常務に盾突くときに口にするような敵意のこもった「あなた」ですよ。もしくは逆転裁判の成歩堂龍一が証人のウソを暴くときに口にするような「あなたッ!」ですよ。あとめったに呼ぶこともない。よほど必要にかられたときに呼ぶ代名詞。
で、この先私がどこかで職に就いたとしても、呼ばれるのは苗字。海外交流でもすればファーストネームが呼ばれるのだろうけど、それ以外で親しみを込めて名前を呼ぶ人はいない。女の友人は学生時代の名残で「名前+ちゃん」だから惜しい気もする。