怒りとゲーム
実のところ、怒りを持ち続けるのはひどく疲れる。常に意識していないと、怒り続けるのは難しい。私はもう二度とシタに心を許すことはない。浮気は今回発覚したぶんだけではない。肉体関係までは発展しなかったものの、妊娠中にもあった。そのあともあった。そこで得た『職場の若い女性に手を出そうとするとセクハラになる』教訓が、皮肉にも生かされた結果なんだろう。出会い系。
お互いを空気のように『見えない存在』として取り扱うのはひどく疲れる。子供に対しては普通でいなければならないから尚更。しかしこの生活は慣れればいいことばかりかもしれない。余計な入出力をしなくて済む。シタは義母ゆずりの口から生まれたような人なので、普通にしていたらものすごく口数が多い。とにかく大きな声で私を太っているだとか、バカだとか、人権を侵害するようなことばかり言ってくる。それがなくなったこの数日は、不愉快さよりも快適さが大きい。もちろん、家にシタがいないことが一番の平和だけども。
こういうときは趣味が大切だ。近しい誰ともつながらないような、自分だけの趣味。
むかし大失恋をしたときにそれを身をもって知った。仕事でもいいんだろうけど、あいにく今の仕事はシタと関連しているのでそれには打ち込めない。そういうわけで横たわりながら昔のゲームばかりをしている。ただ時間をつぶすため、没頭するために。現実では微熱とフラッシュバックが襲ってくるから、ゲームの中だけが私の現実なのだと思い込もうとする。